真冬の羅臼で、流氷の上に止まったオオワシを撮りました。
海外で同じ絵を狙うと、移動も滞在も相当かかります。しかも撮れないことがある。
北海道なら、羅臼の港から船に乗るだけです。
クルーズは約2時間30分。港を出て十数分でワシが現れるので、そのほとんどが撮影時間になります。移動に二時間半かかる、という意味ではありません。
ずっと甲板に立っている必要もありません。寒くなったら船内で温まって、また出る。そういう乗り方ができます。
ただし——流氷は、もう当たり前には来ません。そこが一番大事な話なので、先に書きます。

流氷が減っています(最新データ)
気象庁と海氷情報センターの数字を見ると、はっきり出ています。
- オホーツク海の最大海氷域面積は、10年あたり全体の約3.7%のペースで減少しています
- 2025年の網走の流氷初日は2月15日。平年より24日遅く、1946年の統計開始以来いちばん遅い記録でした
- 同年の流氷接岸初日は2月17日。平年より13日遅れ
- 2025/2026年シーズンの最大海氷域面積は75.84万平方キロ。1970年の統計開始以来、2番目に小さい値でした
つまり、「2月に行けば流氷がある」という前提が、もう通用しなくなっています。
私が行ったときも、沖に流氷が見えない日がありました。
数字だけ見ると寒々しい話ですが、現場に行くと実感としても分かります。
地元の人に聞くと、「昔はもっと早く、もっと厚く来た」という話が必ず出ます。
二月に行けば一面の流氷、というイメージは、もう十年単位で古いものになりつつあります。
だからこそ、行くなら早いほうがいいとも言えます。
流氷がなくても、ワシは撮れます
ここが大事なところです。
流氷が来ていない日、船は沖に出ません。湾の中での撮影になります。
そしてこのとき、ワシとの距離はむしろ近くなります。
流氷の上に乗った絵は撮れません。でも、飛んでいるオオワシを大きく写すなら、こちらのほうが条件がいい。
狙いを切り替えられるかどうかで、その日の満足度が変わります。
「流氷がないからハズレ」ではありません。撮れるものが違うだけです。

実際、私が乗った日も沖に氷がありませんでした。
正直に言うと、乗る前は落ち込んでいました。
でも終わってみると、その日の写真が一番良かったです。
距離が近いぶん、羽の一枚一枚まで写りました。氷の上に止まった絵より、飛んでいる瞬間のほうが迫力が出た。
撮れるものが変わるだけで、撮れないわけではありません。
羅臼(らうす)への行き方
飛行機で行くなら、中標津空港がいちばん近いです。
女満別空港からも行けますが、遠い。朝の便に間に合わせるには、かなり早い時間に宿を出ることになります。
どちらにしても、真冬の北海道で雪道を運転します。所要時間は夏の感覚では考えないでください。
私は中標津に泊まりました。朝が楽です。
羅臼の町に泊まれれば一番ですが、宿の数が限られているので早めの確保が必要です。
羅臼は知床半島の東側、根室海峡に面した町です。
半島をはさんで反対側がウトロ。ウトロからも流氷の観光船が出ていますが、ワシを狙うなら羅臼です。
理由は、ここが冬のあいだ、オオワシとオジロワシが大量に集まる場所だからです。
国後島との間の海峡は凍りきらず、魚が獲れる。だから鳥が来る。
いつ行くのがいいか
狙い目は二月です。
一月下旬はまだ氷が来ていないことが多く、三月に入ると崩れはじめます。
ただ、ここ数年は二月でも読めません。
直前に海氷情報センターや気象庁のページで海氷の状況を見ておくと、心の準備ができます。
あと、ワシの数も時期で変わります。オオワシは冬鳥なので、真冬が一番多い。
三月後半になると、北へ帰りはじめます。
ちなみに、冬の羅臼は宿泊施設が限られます。
船と宿を同時に押さえるのが理想ですが、取れなければ中標津から通う形になります。
車で一時間強。雪道なので、時間には余裕を見てください。
流氷クルーズの運航会社と料金
羅臼から流氷クルーズを出しているのは、おもにこの三社です。
- 知床ネイチャークルーズ(0153-87-4001)
- 観光船はまなす(0153-87-3830)
- ゴジラ岩観光(0153-85-7575)
料金の目安です。会社と便によって差があるので、必ず公式サイトで確認してください。
- 朝便(撮影向き)大人 約11,000円 ※一眼レフ持ち込みの料金
- カメラ持ち込みなしの朝便 約8,800円
- 昼便 大人 約4,400円
- 所要時間 約2時間30分
運航期間はおおむね1月下旬〜3月上旬。ただし流氷の状況で前後します。
撮るなら朝便です。光が低くて色が乗ります。日中の便は光が硬くなります。
三社とも小型船です。大型の観光船と違って、水面に近いところから撮れます。
この低さが効きます。ワシを見上げる角度ではなく、同じ高さで撮れるので。
ただし揺れます。船酔いしやすい人は、酔い止めを前日の夜から飲んでおいてください。
撮影中に気持ち悪くなると、それだけで終わります。
予約は、飛行機と同時に
いい日程と時間帯は、数か月前に埋まります。
行くと決めたら、航空券と同時に船を押さえてください。順番を逆にすると、だいたい間に合いません。
それと、前日に欠航が決まることがあります。海が荒れれば出せないので、これは仕方がない。
遠くから行って一回で終わるのは痛いので、二泊して二回乗るのをおすすめします。
一日目が欠航でも、二日目がある。そう思えるだけで気持ちが違います。

もうひとつ。朝便は日の出前に集合です。
真っ暗な中、氷点下の港に立つことになります。
宿の朝食は間に合いません。前日にコンビニで何か買っておくといいです。
羅臼は店も少ないので、中標津あたりで済ませておくのが無難です。
レンズは100-400mmが使いやすい
船の上です。揺れます。
そして被写体は飛びます。
この条件だと、100-400mmあたりが一番使いやすいです。
600mmの単焦点は画質では勝ちますが、船上では振り回せません。構図に入れるまでが間に合わない。
ワシが近くに来たときも、400mmなら引けます。単焦点だと切れます。
重さも効きます。二時間半、手で支え続けることになるので。
手持ちです。三脚は使えません。船の上では意味がないので。
だから手ぶれ補正は必ずオンにしてください。
あと、レンズフードは付けたままでいいです。水しぶきが飛びます。
カメラは2台体制がおすすめ
理由は、レンズ交換が現実的にできないからです。
揺れる船の上、氷点下、手袋。ここでレンズを外す気にはなりません。
なので、望遠を1台、広角を1台。
流氷の海と知床連山の景色は、望遠だけで帰ると後悔します。
広角側は24-70mmくらいで十分です。
バッグは、床に置けると思わないほうがいいです。
甲板は濡れていて、場所も狭い。
必要なものだけを体に付けて、あとは船内に置く形になります。
二台ぶら下げるなら、二丁掛けのストラップがあると楽です。
撮影設定の目安
飛んでいるワシを止めたいので、シャッター速度を優先します。
- シャッター速度 1/1600秒以上。羽先まで止めるなら1/2500秒
- 絞り 開放〜F8あたり
- ISO オート。朝は上がりますが、ブレるよりましです
- 露出補正 プラス補正。流氷が白いので、カメラが暗く写そうとします
- AFは追従(AI SERVO/AF-C)。瞳認識や鳥認識があれば必ず入れてください
- 連写はオン。一瞬で終わります
白い流氷と黒いワシは、明暗差がきついです。RAWで撮っておくと、あとで救えます。

あと、白飛びに気をつけてください。
流氷に朝日が当たると、驚くほど明るくなります。
プラス補正をかけすぎて、氷のディテールが全部飛ぶことがあります。
ヒストグラムを時々見るか、白飛び警告を出しておくと安心です。
私は最初の十枚を飛ばしました。
防寒と、機材の守り方
船の上の氷点下は、陸の氷点下と別物です。風があります。
- 手袋は二重。薄手のインナー+厚手。操作は薄手だけでやります
- カイロは腰・背中・足先。予備バッテリーも懐で温める
- バッテリーは寒さで一気に減ります。最低2本、できれば3本
- 靴は防水の冬靴。甲板は濡れて凍ります
- 帰ってすぐカメラを暖かい部屋に出さない。結露します。バッグに入れたまま一時間ほど慣らす
それから、服は着込みすぎないこと。
動けなくなると、カメラを構えるのが遅れます。
上半身は軽く、下半身をしっかり、が基本です。
風を通さない上着だけは、いいものを用意してください。
撮り終わったあと、手が動かなくなっていることがあります。
船内に戻って温まってから、もう一度出るくらいでちょうどいいです。
二時間半ずっと外に立っている必要はありません。
オオワシとオジロワシの違い
撮っているときは夢中で気にしませんが、あとで整理すると混ざります。
- オオワシ——くちばしが大きくて鮮やかな黄色。肩と尾が白い。冬鳥として北海道へ渡ってきます
- オジロワシ——全体に茶色っぽく、尾だけが白い。北海道で繁殖する個体もいます
どちらも国の天然記念物で、絶滅危惧種に指定されています。
流氷が減ると、この鳥たちの餌場も変わります。写真を撮りに行く側としても、他人事ではありません。

餌をまく船もあります。
ワシが集まってくるので、撮影のチャンスは確実に増えます。
ただ、これについては賛否があります。野生動物に餌を与えることをどう考えるか。
私は、撮らせてもらっている立場なので強くは言いません。ただ、そういう議論があることは知っておいたほうがいいと思います。
まとめ
- 流氷は年々減っている。来ない前提でも楽しめる計画を立てる
- 流氷がない日は湾内。ワシとの距離はむしろ近い
- 船は朝便。予約は航空券と同時に
- できれば二泊して二回乗る。欠航の保険になります
- 宿は中標津が現実的。女満別は遠い
- レンズは100-400mm。600mm単焦点は船上では扱いにくい
- カメラ2台。広角がないと景色で後悔します
- 1/1600秒以上、プラス補正、RAW
- 結露に注意。帰ってすぐ出さない
料金や運航期間は変わります。行く前に必ず各社の公式サイトで確認してください。


最後にひとつだけ。
あの朝の寒さは、写真に写りません。
でも、撮った本人はずっと覚えています。
手がかじかんで、ダイヤルが回せなくて、それでもシャッターを切った。そういう記憶のほうが、後から効いてきます。
行けるうちに、行ってください。
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